「日本国王」が天皇に匹敵する権威とは考えられず、かつて指摘されていた義満の王権簒奪説が妥当とは思われない。

天皇はあくまで日本国内でのみ権威を持つものですが、「日本国王」は明の冊封体制が構築された東アジア世界において公認された国位です。その世界においては、天皇より義満の方が地位が上ということになります。義満は明との交渉を開始したとき、懐良親王が明へ援軍を要請したのではないかと疑っていますが、建国間もない明にそうした余裕はなかったにしろ、同じような可能性は義満が天皇に対してなすことも可能であったわけです。よって、王権簒奪説も無根拠に提出されてきたわけではありません。