気候の変動によって農業の形態にも変化があるのでしょうか。

もちろん、変動があります。生業全般ということでいいかえておきますが、例えば縄文時代には、温暖化に伴い針葉樹林や氷原が減少して狩猟対象であった大型哺乳類が消え、逆に海進により入り江が多く形成され堅果類を落とす温帯森林が復活したため、漁撈や採集を中心にした生業へ移行します。縄文時代の終わりに寒冷化が進んでくると、増加した人口を維持するため原始農耕が開始されますが、稲作はそうした時期に伝来し、再び気候が温暖化するなかで西日本を中心に広がってゆくわけです。稲作農耕も、租税化によって生産が前提化するなか、寒冷化の時期である近世に品種改良が図られ、併せて冷温に強い他の作物の生産も奨励されてゆくわけです。高校の日本史教科書に載っている農業技術の変化・進展の記事を、古気温曲線に則して読み込んでゆくと、人々が気候の変化に対応しどう知識や技術を展開させていったかが分かるでしょう。