人魚=女性というイメージがありますが、日本の伝説のなかには、男性の人魚も存在したのでしょうか?

日本における人魚の初見は、『日本書紀推古天皇27年夏4月己亥朔壬寅条です。「近江国言していはく、『蒲生河に物有り、其の形人の如し』」。続いて同年秋7月条に、「摂津国に漁父有り、罟(あみ)を堀江に沈むるに、物有りて罟に入る。其の形は児の如し。魚に非ず人に非ず、名づくるところを知らず」とあります。当初は性別などへの認識はなかった、ということでしょう。以前国立科学博物館に人魚のミイラが展示されたことがありましたが、江戸時代には、河童や龍など、伝説上の生き物のミイラを作る贋作師がいたのです。実物をみると、アンデルセンの人魚姫のような美しい女性であったとは考えられませんので、日本では性別を超えた妖怪的なイメージが強かったのでしょう。ヨーロッパでも、男性の人魚を表すmermanという語は、古くからあるmermaidに比して新しく、17世紀頃までしか遡れないとの見解もありますので、やはり一般的ではなかったのかもしれません。
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