縄文時代の自然信仰について、世界で同じような動物が信仰されるのは、似た考えがあったからなのでしょうか。どこからか伝わったということはないのですか。 / 外国の神話と日本の神話で似ているときがありますが、それは偶然なのかそれとも伝播してきたのか、または人間の心の奥に共通して存在している考えなのでしょうか。

同様な環境下ではどうような文化が営まれるという見方、どこからかひとつの形式が伝播してきたという考え方の、両極的な説明の仕方が存在しますが、実際はその折衷でしょう。例えば照葉樹林文化論という考え方では、植生を同じ照葉樹林とする地域では、基礎を同じくする衣食住が営まれるため、文化も似通ったものになってゆく。さらにその文化圏が連続していたり近接していたりすると、ひとつの地域で行った技術、思考などが、流通を通じて他地域にも伝播・定着しやすい。また、スキタイ荷担説という見方では、スキタイの神話のなかにあった英雄伝承が、彼らが傭兵として移住したブリテン地域に伝わり、アーサー王伝説の基盤となったという見解です。我々の知りえないような繋がりが、隔絶した地域に存在する可能性もありますので、研究者としても両方の可能性を考慮しつつ、慎重に考察してゆく必要があります。