儀式で人を殺すことは昔はずいぶん多かったのかと思いますが、いつ頃からそれはなくなっていったのでしょうか。動物を殺すことと人を殺すことは、どちらが重く心に響くのでしょうか。

神霊に何らかの犠牲を捧げる祭祀や儀式は、「供犠」と呼ばれます。一般に文化人類学や宗教学では、犠牲にはそれを捧げる主体にとって最も大切な存在であるべきで、当初は人間、しかも家族や肉親が選ばれたとみられています。しかし、祭祀自体の世俗化に伴って犠牲の代用化も進んでゆき、同じ人間でも家族外、共同体外と次第に外へ外へと移ってゆき、最終的に動物や人工物になってゆくという具合です。日本列島で供犠が行われたかどうかには長い論争があり、実際にあったとする見方、中国から伝来した物語だけが存在し現実にはなかったとする見方が衝突していましたが、これは現在も通説をみていません。