流行病を外敵起源とする発想が中国から直接受け継がれたといえる史料は、まったく存在しないのでしょうか。 / こうした発想は、現代にも影響を与えているのでしょうか。

前回紹介した文献は確実に日本へ将来されていますので、可能性は高いだろうと思います。そうした認識を持った渡来人が数多く入ってきていた、ということも考えられます。ただし、外部から邪なモノが入ってくるのを防がなければならないといった心性は、恐らく弥生時代以降には列島のなかに存在しました。よって、中国から「学ば」なくとも、列島で生まれた心性なのかもしれません。なお、縄文期以降の長いスパンで列島と海外との関わりをみてゆくと、外の世界から入ってくるものには概ね開放的であった印象が強い。現代の在特会アイヌ否定論などにみるような醜い排外主義、自分たちの不安をすべて外部に振り向ける卑怯で脆弱な心性は、それだけ社会不安が高まっている、個人個人の危機感が強い反映だとみることもできるでしょう。