祥瑞記事・天文密奏の実務官人以外の死亡例はあるのでしょうか。ただの焼失という可能性もあると思うのですが…。 / たくさんの官人が死んだら、記事が抜けるよりもっとひどい被害がある気がするのですが。

私の説明の仕方が悪かったのかもしれませんが、『続日本紀』の一定期間に祥瑞記事・天文密奏がないことは、極めて重大な出来事なのです。授業でも説明しましたが、天文の異変は災異の予兆であり、それは天が行う皇帝への警告・譴責ですので、見誤ると皇帝自身の身体ばかりか、国家そのものの�覆に繋がりかねない事態になります。それゆえに、律令では陰陽�に天文の観測が義務づけられ、異変があれば「密奏」すなわち密封した上奏として上進されるのです。いわば最大の国家機密であって、政治的に利用されれば謀反も起こりえますから、その記録・保管には最大の注意が払われたはずなのです。すなわちこの事態は、国家の根本が揺らいでいることを意味するのです。記録だけがなかったのか、それとも観測自体が行われなかったのかは不明ですが、恐らく後者でしょう。この事態だけをとっても、背景に最大規模の政治的欠落、運営上の混乱の生じていることが推測されるのです。