今回の講義で紹介された治療は、どのくらいの時期まで続いたのでしょうか。また、これによって生存率は上がったのでしょうか。

太政官符の処方は室町時代の『拾芥抄』にまで引用されていますので、長く命脈を保っています。それはすなわち、一定の効果が確認されたために、貴族層の間にも広まったということでしょう。以前に紹介した『古事談』の典拠である源俊房の『水左記』では、医師の処方より太政官符に出てくる「韮・葱を煎じて服用せよ」との処置が効果があった、と述べています。具体的な生存率は示せませんが、当時の人々が「効果あり」と考えたことは確かでしょう。