典薬寮の勘申にはたくさんの薬が出てきましたが、当時の五位以上の官人たちの周囲に、どれほどそれらが出回っていたのでしょうか。

長屋王藤原四子のような最高級の貴族たちは、自分の薬園を持っていたり、独自のルートを通じて入手できたはずです。『源氏物語』には、山野を舞台に生業を持つ「山賤」などが登場しますが、そのような人々を奉仕させている家、一族もあったでしょう。しかし大部分の貴族たちには、付近の山野で入手できないものの場合、典薬寮から支給される薬がすべてだったでしょう。