ヤマト王権とヤマト政権の相違は何でしょうか。

政権とは政治権力のことですが、その指し示すイメージは非常に近代的です。古代は、宗教や呪術、政治などが未分化に表明され、そのこと自体が権力として現れることが多いので、そのあたりの研究が進んでゆくにつれ、「政権」という言葉がだんだんと馴染まなくなってきました。また、ヤマトの権力集団を飛鳥以前に遡らせ、古墳時代の考古学と強く連結して考えるようになったことも、ひとつの要因です。同種の言葉としてかつて一般的だった「ヤマト朝廷」という名称も、『日本書紀』の記述を前提に、あたかも早くから列島に中国的朝廷が存在したかのような先入観を与えてしまうので、近年ではあまり使用しなくなりました。今のところは、王の権力、王の権威を中心に結集した権力体の意味で「ヤマト王権」と呼称するのが、一般的といえるでしょうか。