そもそも、竪穴式石室から横穴式石室に構造が変化したのはなぜなのでしょう。何がきっかけで、死者観や他界観は変化するのでしょうか。

難しい問題ですが、まずは、前期から中期にかけて、死者が呪術的な存在から次第に身近な存在へと変化しつつあったことが挙げられます。古墳の被葬者は現首長の権威の根源となるものでしょうが、古墳に対する儀礼が現世と他界を区切る喪葬的なものから、カミを祀る恒常的な祭祀へ移行してゆくこと、また被葬者の生前の事業を顕彰するような埴輪配列が生まれてくることは、それだけ現首長が前首長を身近に感じようとしている、距離を縮めようとしていることの表現と考えられます。そこへ、最新のモードとして石室へ出入り可能な横穴式が伝来してきたため、3〜4世代の間に後期古墳の形式への変化・普及が生じてゆくことになるのでしょう。