民族社会の通過儀礼にも、例えば婿に入った男性にその家の竃で作った料理を食べさせることで、本当の家族として組み込むというものがあったらしく、平安貴族の間でも露顕(ところあらわし。披露宴のこと)の夜に、妻方一族の有力者(父や兄)が、婿に餅を含ませるという儀礼が行われていました。世界への帰属が食べ物で表現されているわけです。古代、天皇はその統治する世界のことを「食す国(ヲスクニ)」と呼びましたが、これは地域地域から貢納される土地の産物を食べることが、支配と重ね合わせられていたためです。食べるということは、領有する/されることと、密接に関わっているのです。