生きた人間を神として崇める発想は、あまり聞いたことがありません。他の地域にはあったのでしょうか。

古代の王は、おしなべて祭政一致の存在であり、そのなかには、神として崇められたものもありました。例えば中国全土を統一した秦始皇帝など、もともと人間が登りうる最高の位は王であって、帝は神を意味したのです。すなわちあらゆる王を否定しそのうえに君臨した始皇帝は、自ら神と名乗ったといえるでしょう。よって『史記』のなかには、天皇と同じく神殺しといえるような記述も散見します。確かに東アジア世界ではプリミティヴな印象がありますが、天皇だけが特別な存在ではないのです。