日本の「家」の考えでは、ときに能力を重視し血縁を気にせず養子にとり家を継がせる、といったことも行われた。こうした考え方も大陸から渡ってきたのだろうか。

長子相続を重視するのは序列を第一とする儒教の発想で、社会の安定化を目指すものです。儒教が生まれた春秋時代は、周王朝の理想が崩れ諸侯が台頭した時代で、孔子はこれを「もとの理想」へ復帰させようとしたわけです。以降政治・社会思想としては、動乱期がある程度終息し社会の安定化が求められる時期、支配のイデオロギーとして活用されました。「家を維持するうえでも実力が重要」とするのは動乱期のものの見方で、長子相続より時代や社会との緊張感が強いものです。これらは互いに補い合いながら家を保持するうえで効果を持ちますが、もちろん中国にも先例があるわけですが、日本列島の場合もすべて中国的価値観を踏襲したというわけではなく、時代情況のなかで臨機に生まれてきたものとみてもよいでしょう。