漢方を用いる際に呪術的に用いることによりプラシーボ効果で効き目が増すことがある、とのことでしたが、それならば現代では、科学のみを信頼しようとするあまりに薬が効きにくくなる、ということはありうるのでしょうか。

そうはならないでしょうねえ。なぜなら、科学のみを信頼するのも、一種の信仰であり、呪術になりうるからです。科学と呪術の相違とは、一体何でしょうか。現在のさまざまな科学技術を古代の人々がみたら、きっと魔法と同じにみえたことでしょう。それは、技術を支える論理が当時の水準とかけ離れているからであり、理解しがたいからです。逆に、当時魔法と思われていたものも、それを支える論理が発見され、実験や経験によって繰り返し実証されれば、科学の仲間入りをすることになります。また、現在科学の範疇に入っていることでも、私たち専門の科学者ではないものにとって、魔法と同じ状態でしか認識されていないものもあります。宇宙の存在などは典型的で、多くの人々が肉眼でみたり、実体験として確認したりできないものが、メディアからの情報のみによって、「真実」として示されているのですから。ゆえに、これは一種の信仰、宗教と同じものといえます。そうした感覚で医療を捉えている限り、一定のプラシーボ効果も期待できるでしょう。