中国の古い医書を研究している日本の研究者はほとんどいない、とのお話がありましたが、しかしプリントには、『産経』その他の日本語研究文献が幾つか引かれているようです。そういった先行研究があるにもかかわらず、〈食唐鬼木簡〉のルーツを『千金翼方』のみに求める通説が一般化していたのでしょうか。

プリントに参考文献リストも載せましたが、もちろん研究している日本人はいます。講義でお話ししたのは、「日本史の研究者で中国の古い医書を研究しているひとがいない」ということです。すなわち、中国の医書に刻印されたさまざまの豊かな情報を、日本文化の分析・考察に役立てられるひとがあまりいない。そのあたりの研究の積み重ねが求められている、ということなのです。