処刑されたものが病を引き起こすという考えは、西洋の悪魔祓いなどの呪術的なものにはみられないのでしょうか。道教思想の影響を受けていない文化で同じような例がみられれば、上記の考えは道教思想に基づくという考えは成り立たないと思いました。

道教思想に基づくものだ、とは説明していません。あくまで事例として挙げた経典が道教のものであり、そうした発想が道教に採り入れられ意味付けされたのだ、ということです。刑死者、とくに非業の死を遂げた者が災禍をなすという発想は、ヨーロッパにもみることができます。中世史家 ジャン=クロード・シュミットの『中世の幽霊』を繙けば、自殺者、産死者、墓所もなく供養されない死霊たち、名誉を奪われた死霊たちが、生者に災禍をなすとする信仰・伝承が強固に存在したことが分かります。