不老長寿の薬として水銀からつくられた丹ですが、司馬遷『史記』にも秦の始皇帝の墓には水銀の海がある…というような記述があったと思いますが、水銀は古代の人々にとって特別なものだったのでしょうか。
もともとはその防腐効果に端を発するのでしょうが、かなり早くから破邪の機能を持つとする発想があったようです。施朱の習俗自体は旧石器時代よりみることができますので、不老長寿云々も、そこから派生した考え方でしょう。また、液体状態の水銀は、金属でありながら常温で流動することで、境界を越境するものの象徴とみなされたのかもしれません。「この世の理」を飛び越える効果がある、と期待されたのでしょう。