『古事記』ではヤマタノヲロチを、川の神だとは表現していません。その特徴を記述した部分には、「その目は鬼灯のように赤く、胴ひとつに頭と尾が八つずつある。また、体中に蘿(ヒカゲカズラ。シダの一種)や檜、杉が生えている。身体の長さは八つの谷、八つの峰に及ぶほどで、腹は常に血が爛れたようになっている」と書かれています。すなわち、斐伊川の流れる山野の姿そのものを神格化しているわけで、山を流れる川のもたらす災害の形象化だとみることができるでしょう。斐伊川の神だという説明は、研究者の言説に由来する一般的定義に過ぎません。