自分の身を守る、隠すという遁甲などの術で、方角が詳細に用いられている理由は何でしょうか。また、禹歩が重視された理由はどこにありますか。

身を隠すということは空間の問題になりますので、空間の位置を特定するツールとしては、やはり中国前近代では六十干支による方角指定が一般的なのだと思います。これは現在の風水にも流れ込んできますが、宅地から墓地の占定にも用いられる知識・技術です。なお禹歩については、最後にするまとめの話とも関連しますが、禹という人物が中華全土の治水を行い大地が安定、人間の王朝が作られるようになったという、神話的な正当性も大きいのだろうと思います。すなわち禹王とは大地の医であり、その調和を導き、コントロールを可能にする。その禹に起源を持つ呪術だからこそ、医と呪が一体となった道教で用いられやすい、ということなのでしょうね。