紫式部は、医術=呪術をめぐる観念連合について、書物を通じて知ったのでしょうか。

彼女はかなりいろいろなものを読んでいますので、やはり書籍でしょうね。当時一流の有職故実に関する知識人、藤原実資が彰子を訪ねてくる際には、必ず紫式部が対応したといわれる存在です。散文の物語りのなかに種々の漢籍的要素を分解し、忍ばせている可能性が高いですね。『うつほ物語』にも『産経』などが登場しますので、彰子の妊娠や出産をめぐって、その手の医書を集めさせていた可能性もあるのではないか、と思います。