イザナミ・イザナキに関するアジアの類話について、それは各地域で自発的に生まれたものですか、それとも互いに影響し合っていたのでしょうか。
やはり影響しあっていますね。少数民族の神話では、兄妹婚姻によって生まれてきた子供たちを、それぞれ自民族と、隣接する民族の祖とする話型も存在します。交流によって話型が伝播し、それぞれの地域の自然環境と文化との関わりのなかで変質し、定着してゆくということが、多元的に展開しているのだと考えられます。日本の古代神話としてのイザナキ・イザナミ神話は、『古事記』や『日本書紀』に載る幾つかのバージョンしか知ることができませんが、これらの書物は国家的に編集されたもの。現実の古代社会には、より多様な形態の神話が、隣接諸地域と関連しつつ成立していたと想定できます。恐らく、もっと中国や朝鮮のそれに近いものも語られていたでしょう。