葬儀の際にも、出産のときのような儀礼がさまざまにあるのでしょうか。また、現代は出産に関する儀礼は残っていませんが、何か理由があるのですか。

葬儀は、だんだんと斂葬・埋葬に収斂してゆきますが、例えば殯(モガリ)が存在した頃には、長期の場合1年をかけて子供・近縁者・家臣などの誄奉上が行われ、生きているときと同じように、妻が遺体に奉仕するといった手順が行われていました。現在でも中国の少数民族では、短い期間ですが殯も行われ、まずは死者の蘇生を願う魂呼いから、近親、親戚が訪れる度に行われる哭泣、死者の魂を邪鬼から守り無事に他界へ送り届けるための、数段階の儀礼が展開され、最終的には野辺送り、火葬、埋葬となってゆきます。簡略化はしていますが、現代日本でも種々の行程がありますよ。また出産の場合は、近代医学の普及によってある程度無事に出産がなされるようになり(永遠に解明されえないだろう「死後の世界」とは違って)、儀礼は衰えていったのでしょう。