高校の日本史では、道鏡について、「男性として魅力的だった」との説明を受けました。これは、本当のことだったのでしょうか。講義では、あくまで言い伝えだとのことでしたが…。

いわゆる道鏡巨根説は、早く平安初期の『日本霊異記』には登場してきます。当時流行した戯れ歌(童謡)の解釈として、道鏡と称徳との関係などが持ち出されてくるわけです。真相はもちろん分かりませんが、称徳が道鏡の何を重要視したかは、授業で説明したとおりです。『続日本紀』には、仲麻呂淳仁は称徳を牽制すべく「道鏡との仲を諫めた」と出てきますが、同書を編纂した桓武朝において称徳を貶めるために記述した可能性もあります。「男性は論理的、女性は感情的」とのジェンダー・バイアスのなかで、学界でも一般社会でもその典型のように扱われてきた事例であり、注意が必要です。