かつて史学とひとつだったという医学は呪術的な要素も強いですが、現代に専門化が進むことで分化をしたものの、古代ではひとつだったという学問は他にもあるのでしょうか。
『周易』上経/賁卦/彖伝には、「天文を観ては以て時変を察し、人文を観ては以て天下を化成す」とあります。聖人は、天文をみて時節の変化を読み取り、人文をみて人民の情況を察しこれを教化成育する。つまり、世界の情勢やありかたをしっかり把握してゆくために天文を見定めるのが「天文学」、天の秩序を反映していなければならない人の世界を、あるべき姿へ近づけるためにしっかり観察してゆくのが「人文学」であるわけです。そういう意味では、この2つは密接に結びついた、ペアの学問であるということになります。天文学をいまの自然科学、人文学を人文科学に置き換えて考えることは容易です。最近、文科省が公立大学に対し人文学科縮小の通達を出し、社会的にも実学重視の風潮が高まっていますが、これなどは近代的な「分化」が招いた弊害といえるでしょう。