東日本大震災における東北への批判について、歴史学的にどのように反論したのですか?
震災直後の東北に対しては、1)繰り返し津波の来る水辺などに住むのが悪い、2)祖先からの災害の教訓を受け継いでいないので自業自得だ、という批判がありました。まず1については、縄文時代の最新研究を通じて、列島における定住生活が水辺と山麓の往復から始まったこと、狩猟採集の合間に比較的容易に魚介が捕れ、精神衛生的にも条件がよいことなどを挙げ、「水辺に住むのが悪い」という考え方は当たらないと主張しました。また2については、現在列島社会全体で大規模な流動化が起きており、何代も続けて一箇所に住み続けているという家は少なくなっている。また、世代間の価値観の相違などから分裂が促進し、過去の世代の知識や考えがうまく後の世代に繋がらなくなっている。これは全日本列島的現象であり、東北だけを「自業自得」とするのは誤りである、と述べました。