仮名文学や女流文学などは、中国の影響を受けて進化したということでしょうか。

それは間違いありません。史料を深く読みこなせるようになるとだんだん分かってきますが、『枕草子』にしても『源氏物語』にしても、中国文化に根差した深い教養が随所に散りばめられています。漢籍を深く学んだことがある者でなければ分からない、多様なコードが内在しているのです。物語の祖と呼ばれる『竹取物語』など、基本は中国在来の宗教である道教の根源のひとつ、神仙思想です(古墳時代で扱いました)。かぐや姫は月から地上へ流讁された仙女であるわけですが、そもそも月に不老不死の神仙世界が存在するという考え方自体、中国的なものです。ただし物語のラストで、帝は姫からもらった不老不死の仙薬を、「姫がいないのでは仕方がない」と富士山の山頂で焼かせてしまいます。このような、天上の永遠性に対する地上の有限性の対比、後者への思い入れの強さは、列島的な発想ではないかと考えられています。