負の歴史の封じ込めや、この愛国ブーム、日本誉めの要因は何なのでしょうか?

まず第一に、恒常的不況に突入したことによって、経済的な意味での生活不安が増大し、列島社会に精神的余裕がなくなってきたことが挙げられるでしょう。ヘイトスピーチや、最近話題になったシリア難民への非難なども、多くは「自分が得るべき保障が横取りされている」といった意識が作用しています。世界の誰よりも自分のことが苦しく思えてしまう、逆にいえば他者への想像力が著しく欠如している。そうしたなかで、自分たちに対する批判への憎悪、それを極度に怖れる姿勢からマイナス点に過敏になってしまったり、自分で自分の傷を舐めるような情況に立ち至ってしまったりしているのでしょう。国家を擬人化して論じるのはあまり建設的ではないですが、あえて行うとして、自分の失敗には無自覚、もしくは意識していても隠蔽ばかりしてだんまり、逆に自分の利益が害されることには敏感で、周囲には攻撃的、自分のことは誉めてばかりいる。こんな人間のことを誰が信用し、仲間だと思ってくれるでしょうか。現在の日本は、戦後、最も「尊敬されない国」になっていると思います。