トゥアンのトポフィリアは「場所への愛」ということでしたが、それもまた人を縛るもののひとつということでしょうか。 

これは、仏教の考え方を媒介するとよく理解できるかもしれません。仏教では、愛情も煩悩であると捉えます。すなわち、主体が何らかの対象に執着し、それに囚われて自由を失うからです。場所への愛着もしかりです。例えば、あなたにとって居心地のいい場所、逆に悪い場所のことを思い浮かべてください。誰でも、前者にできれば長く居たい、後者にはできれば留まりたくない、と思うでしょう。しかし、例えば自分の未来が、後者によって大きく開けるとしたらどうでしょうか。場所への執着によって、大事なチャンスを逃してしまいかねません。ゆえに、場所への愛着もまた、束縛の意味があるのです。