ナショナル・ヒストリーを自国に有利に書く、ということは、日本以外の国でもあるのではないでしょうか。現代において歴史をきちんと伝えたり記述できている国は、実際にあるのでしょうか?

確かに、ナショナル・ヒストリーが国民国家の統治ツールである限り、他の国においても同様の問題はあります。しかし、例えばドイツのように負の歴史と正面から相対してみせる国(もちろん、そこにも政治的な意図はあるわけですが)や、教科書を鵜呑みにしない思考型、意見交換型の授業は多くの国々で取り入れられています。限界、問題点、課題は常に冷静に見極めてゆかねばなりませんが、その枠組みのなかで何ができるか、また理想を求めてその枠組み自体をどのように更新してゆけるかは、常に考えていなければならないと思います。