生存戦略としての移住があって、定住を基本とする現代の価値観が「進歩的」ではないことは分かりましたが、社会的存在である人間において、社会関係の構築には定住が重要であり、それが歴史・系譜を築いている面もあるかと思います。

知的で重要な指摘です。まず注意しなければならないのは、移動は必ずしも社会構築を放棄するものではない、ということです。遊牧民族にもずっと強固な社会性が存在したことは、ユダヤ民族やモンゴル帝国の成り立ちをみても明らかです。また、現在我々がみている現生人類の社会性は、人間が定住後に築いてきたものであって、いうなれば定住によるストレスを軽減し絶滅リスクを弱めるために構築してきたルールであり、文化であるということです。定住の方向を選んでいなければ、もっと別の社会形態が展開していたと思われます。