仏教では不殺生戒としてあらゆる生命の殺生を禁じているとのことだったが、捨身行によって自らを殺すことはこれに反しないのだろうか。

生命の循環という発想が基本にありますので、キリスト教などの自殺とは少し意味が違ってきます。菩薩行としての捨身は、生きとし生ける者のために行う救済の行動ですので、自殺とはみなされません。例えば講義でも紹介した、飢えた虎に自分の身体を与えるという話は、単に虎の腹を満たして飢餓から救うことだけが問題なのではありません。普通にその虎が飢えて何者かを殺して食べれば、虎は罪業を犯し、長い間にわたって畜生の世界から抜け出すことができないか、あるいはさらに悪い世界へと生まれ変わってしまう。菩薩が自分の肉を与えるということは、虎に悪業を犯させないことにも繋がってくるのです。