アニミズム信仰の対象としては、農作物や農地は強くは認められなかったのでしょうか。

前回お話ししたハニ族の神話のように、アニミズムのなかには、農耕に特化した信仰の形、神話や祭祀も存在したと考えられます。あとあとお話ししてゆきますが、日本にもそうした形式は存在していました。そもそも神社の歴史的原型に当たるような祭祀遺跡は、古墳時代に、開発を肯定し農耕を守護するものとして生み出されてゆきます。しかし狩猟採集社会からの変化を反映したものか、土地を開発してゆく際の神話としては、どうしても「神殺し」的なものが多いですね。これは、野生=神霊のものと認識する世界観が拭いがたいものとして根底にあり、農耕開始によってそれとの断絶を抱えてしまったという歴史観が強く作用しているためでしょう。ドメスティケーションの問題とも深く関わってきます。