ドイツと日本の選民思想を比較すると、日本ではそうした志向を未だに持っている人が多いように思います。「自然(田んぼ)を愛する」ことはもちろん、「四季を味わえる」「旨味が分かる」など、日本人は特別だと思いがちではないでしょうか。他の国家も、多かれ少なかれそういうものなのですか。

社会や文化のあり方、辿ってきた歴史のあり方によって多少の相違はありますが、概ね地球上のあらゆる民族はエスノセントリズム(自民族中心主義)を持っています。それは、自分たちを中心にして世界を把握しようとするからで、自/他のカテゴライズの成立と密接な関連があります。生存のために、自集団の結束性を強めるアイデンティティーが必要だったということもあります。少数民族のなかにも、自らの起源を語る場合、例えば自分たちを最初の男女の直接の子孫として、隣接する民族をその兄弟、もしくは副次的に生み出されたものとする神話が多く語られています。そこへ王権や国家が成立し、他集団とのより大規模な競争・軋轢や、従属・合併などを繰り返すようになると、より複雑な正当化が始まってゆく。列島文化にみえるエスノセントリズムの特徴は、やはり、隣接する文化に比較して自然環境について語ることが多い点でしょうね。近代にその傾向が高まりますので多くは政治的なものですが、自然/文化の境界が曖昧であったことは確かなようです。自然を誉めることによって自分を誉める。それは、自然を大切にしているということなのか、それとも自然を自己の範疇へ抱え込んでいるだけなのか。吟味が必要です。