国風文化は貴族を中心とする文化だと思いますが、民衆の間から生まれて貴族に伝わっていった文化などはあるのでしょうか。

例えば『蜻蛉日記』『源氏物語』などのなかに、中央貴族たちの宇治における別荘で、周囲の山川で生活する「山がつ」と呼ばれる人々が、別荘に奉仕して周辺の産物を届けたり、自然物や生業に関する情報を提供したりするシーンがみられます。また、中世後期の公家山科言継などは、自宅で種々の草花、樹木の栽培を行い、掛け合わせや接ぎ木などの知識・技術を山積していました。それらは必ずしも書物からのみ得た情報ではなく、やはり自宅に出入りする「山がつ」たらから収集されたものもあったと考えられます。