文化とは、どこまで浸透すれば文化なのでしょうか。

私の専攻する環境文化史の観点からいえば、人間の営みのすべてが文化です。まったく社会に一般化していないような、個人が孤立して持つものも文化です。文化は、個、家族や村落、地域、国家といった大小の集団などによって、それぞれ特徴(ある程度の共通性)を持っていることは確かです。また、それらは時代的に変遷するので、古代、中世、近世、あるいはもっと細かな時代区分もできる。そうした場合、前後の時代とは異なる特徴も露わになるでしょう。とうぜん、例えば平安時代にあっては、中央の宮廷の文化もあれば、地方の文化、庶民の文化、そのなかでも農民の文化、山や海で狩猟採集を続ける人の文化など、やはり多様に区分することが可能です。教科書レベルでいう国風文化は、中央の宮廷文化に過ぎません。ならばそれは「国風」と呼ぶに相応しいのかというのが、石母田正らの考え方でしょう。