『千金翼方』で、「三」「九」「八」などの数字がよくでてきていますが、何か固有の意味があるのでしょうか。

3はアジアにおける聖数のひとつで、多数決を決するものとして、すでに中国古代の殷の時代から重要視されています。後に、天・地・人を意味するものと位置づけられます。その10倍、100倍など数は、例えば仏教でいう「三千大千世界」など、宇宙そのものを意味するようになってゆきます。9は易の考え方において、奇数すなわち陰陽の陽の代表とみなされます(逆に偶数=陰の代表は6)。8は主に仏教において、悟りを表す整数とされ、やはり80、800、8000なども神聖な数とされます。もともとは東西南北を示す4がさらに分割され8となったもので、アジアで広く共有される数です。日本でも漢字の形を解して「末広がり」などと重宝しますし、神々の数も800、あるいは800万とされています。そういうものをちりばめて呪文にしてある、ということですね。