柱の材料になる樹木そのものに宿る霊的なものと、人工物としての柱に宿るものとでは、性質の相違があるのでしょうか。

祭祀の種別や情況、それの斎行される時代・社会によって違いがありますが、例えば樹木を柱化する祭儀の過程で、樹木の生命そのものともいうべき樹神が、建築物の守護神的存在へと転化されてゆくといったことがあります。天皇が日常的に起居する宮殿を鎮祭する大殿祭では、樹木に宿る樹神のククノチ穀物神のトヨウケビメが、祭儀を通じて大殿自体の神格化=ヤフネノミコトへ転換されてゆく過程が示されます。転換以前の自然の精霊そのものは、場合によっては人間に祟りをなす恐ろしい存在ですが、転換後の人工物に宿る神格は、基本的に人間を守護する性格を強く持つものになります。