斎槻の話を聞きながら、『となりのトトロ』で、メイが初めてトトロに会うとき、大木の根本の割れ目に落ち、その先で出会ったことを思い出しました。あの大木も、斎槻だったのでしょうか。

トトロに登場するのは、クスノキですね。かなり巨大になる常緑高木ですので、やはり神木に祀られる場合の多かったものです。ちなみに、樹木の洞から根の世界へゆくという発想は、古く『古事記』上/神代に出てきます。ヤソガミたちの迫害を受けたオオクニヌシが、木の股を通り抜けて根の国へゆき、そこでスサノオの試練を受け地上へ復権する、一連の出雲神話で用いられたモチーフです。この場合、根の国は冥界に相当し、スサノオは冥界の王に当たるため、トトロも死霊ではないのかと解釈する向きもあるようです。しかし、いわゆる地下世界は冥界だけではなく、昔話の「雀のお宿」など、精霊の国、他界を指す場合もあります。トトロの場合には、そう考えておけばいいでしょう。