授業のなかで、松前藩がアイヌ民族を支配していたとありましたが、なぜ財力も充分にあるアイヌは支配下に置かれてしまったのでしょうか。 / 江戸時代のアイヌ人のなかで、日本人ともめていたアイヌ人と、日本人の間を取り持つアイヌ人が存在したのはなぜですか。

松前藩によるアイヌの統括は、我々が連想するような隷属的な支配には至っていなかったようです。アイヌの集団は、決して一枚岩にまとまっていたわけではなく、北方地域との交流も含めて、その勢力や政治的・社会的な成熟度など、地域によって大きな相違がありました。それが、王朝や国家へ展開しなかった一因とも考えられています。松前藩は、そうしたアイヌ諸集団のあり方に楔を打ち込み、次第に自らの利益となる方向へ統括していったものと考えられます。18世紀以降、ヨーロッパやアメリカからの密猟者の流入によって、次第に少数民族の交易権が脅かされていったこと、気候の寒冷化がさらに進んだことも、アイヌ諸集団の弱体化に繋がったと考えられます。