『皇清職貢図』からクナシリ・メナシの戦いまで約40年の時間があり、服装にも変化がみられましたが、昔の40年と現代の40年とでは、時間の経過のあり方はどう違ったのでしょうか。

『皇清職貢図』に描かれていたのは樺太アイヌであり、北海道のアイヌ集団とは、同質性とともに異質性も存在します。単純に『夷酋列像』のそれと比較することはできないでしょう。なお時間の変化の仕方は、どうでしょうか。一般に少数民族の世界は、王朝国家や国民国家の都市社会などと比べ、多様な文物の流入が少ない分変化に乏しく、時間がゆっくり流れて感じられるといわれます。しかし、18世紀のアイヌ社会には北方交易による種々の珍宝、情報が多くもたらされており、それらによる集団内部の社会的・経済的・文化的な変化、隆盛と衰退の波が激しかったものと思われます。急速な変化の生じた時期であったといえるでしょう。