気候と人間の気質は関係があるのでしょうか。

このような気候においてはこのような気質、と法則的に一括することはできないでしょうが、ある程度の傾向は確認できるでしょう。ただし、南方地域は享楽的、北方地域は閉鎖的といった単純な考え方ではなく、気候、土壌、植生、景観、歴史過程などから総合的に考えるべきだと思います。人間は歴史的存在ですから、自然環境と同じくらい、社会や政治の積み重ねの影響を受けます。例えば歴史観の面でいえば、ぼくは日本列島のように豊かな自然環境のもとでは、厳格な歴史認識は醸成されないと考えています。なぜなら、人間が環境に及ぼした傷跡が、その豊かな回復力によって、しばらくすると消え去ってしまうためです。よって、自分たちが、あるいは自分たちの祖先が何をしてきたのかということが、しっかりと伝承されない。この点は、アジアにおける歴史認識をめぐる対立にも、大きく関係してくるものと思います。