六道輪廻についての説明がありましたが、「餓鬼」とは一体何なのだろう。「施餓鬼」という法会?があったように思いますが、何か関係があるのでしょうか。

餓鬼は飢えの世界で、何かを食べたいという渇望が横溢し、しかしそれを癒すことができない。一般には、痩せ衰えて腹だけが膨らんだ幽鬼のような「餓鬼」イメージが定着していますが、満たされない飢えの世界、飽くなき欲望の世界だということができるでしょう。講義でも補足説明しましたが、中国仏教では、伝来時に競争相手であった民間祠廟の神々、道教の神々を、この餓鬼のなかに編入したようです。彼らを信仰する人びとは、主に酒肉を捧げて祈願をしたようですが、仏教においては、その両方を飲食することが戒律違反に繋がってきます。ゆえにかかる神々は、罪業を作ると分かっていながら酒肉を要求する存在、すなわち餓鬼であると位置づけられたのでしょう。なお施餓鬼とは盂蘭盆の行事で、本来、このような餓鬼に供物を施し、自らの善業を為すことを意味します。日本でこれが祖先供養へ直結するのも、中国で祠廟の神々(祖霊的な存在も含む)を餓鬼に編入したことと関連するのでしょう。