アジア地域で神仏習合的な現象が多いのは、やはりキリスト教のような、絶対的な一神教が根付いていないからなのでしょうか。

ある意味では正しいのですが、ある意味では正しくありません。というのは、キリスト教が支配的な地域にも、複合宗教的な現象は存在するからです。例えばヨーロッパでは、近世から近代にかけて、ルルドをはじめとして、聖母の出現する奇跡の泉の物語が生まれてゆきます。これなどは典型的なシンクレティズムで、古ヨーロッパ的な水の女神の聖地に、キリスト教が重複しているのです。世界的に行われているイエスの生誕祭、クリスマスでさえ、複数の在来習俗が影響し合って生まれたものです。ヨーロッパの街角、教会、古城などには、在来宗教の精霊、妖怪などのレリーフをみつけることができるでしょうし、こうした存在の登場する祭礼は各地にみることができます。キリスト教などの一神教多神教に対し不寛容であったことは確かですが、それがあらゆるアニミズム的伝統、在来宗教的要素を破壊してきたと考えるのは、明らかに誤りなのです。