南詔と日本との比較に意味があるとのお話がありましたが、個人的には、跋部の北魏などとの比較にも重要性があると思います。日本古代、南詔、北魏などを並べ、宗教・政治などの構造を比較しようとする場合、どのような方法を採ることが有効でしょうか。

これまでの比較研究においては、北魏、南梁を例に取ることが一般的でした。それも、ほぼ政治体制と宗教制度のみを対象にしています。しかし、政治・社会・経済制度を含めて文化と規定した場合、それは明らかに、地域の自然環境との関係において育まれてゆきます。自然環境がまったく異なれば、それに依拠した生業も異なり、それらを材料にした衣食住も異なり、生業と衣食住のなかで醸成される感性や心性も異なってきます。そうした場合、日本とよく似た環境、よく似た文化を持つ雲南が、やはり中華王朝の距離感においてもよく似た情況を持つとすれば、その共通点/相違点を探るのは極めて有効ということになるでしょう。同じように、環境を含めた総合的観点からみてゆけば、北魏や南梁も加えた比較は、これまでより一層素晴らしい成果を期待できると考えます。