仏教が神秘体験、奇跡体験を示すと、儒教や道教が反論するというのが意外でした。初回の授業で読んだ曇鸞の論では、仏教は道教の教えを根拠にしていたりしましたが、その逆はなかったのでしょうか。

ありました。曇鸞が『仙経』を受け取った陶弘景は、江南にて茅山仏教を大成してゆきますが、その教えのなかには、仏教の輪廻転生の考え方、そのプロセスを通じて自身の身体を清浄化してゆき、神仙へ至ることなどが組み込まれています。また彼は、仏からの夢告を得て菩薩号まで自称しています。六朝は、儒教・仏教・道教が対立しつつも交渉し、お互いに他の教えや考え方を吸収し、東アジア的な宗教の姿を実現してゆく時期なのです。