日本では僧侶が生き返るという話を聞いたことがありませんが、何かそういうエピソードはありますか。

いわゆる冥界訪問譚の関係でなら、一度死んだ高僧が七日経って生き返る、蘇生するといった伝承は多く残っています。しかし、『南詔図伝』の梵僧のように、殺害されバラバラにされたものが蘇生する、といった展開はあまり聞きません。日本では、神異僧のイメージ自体が、あまり伝わらなかったようです。しかし例えば、院政期の説話集『撰集抄』に、熊野での修行を終えた浄蔵が、一条橋で父親の三善清行の葬列に出会い、棺桶にすがって泣いたところ清行が生き返ったとの説話があります。これは後に安倍晴明伝説のなかへ取り込まれ、ライバルの蘆屋道満に殺害され、五体バラバラになった父親安倍保名を、晴明が一条橋で生活続命の修法をなし生き返らせるとの展開になってゆきます。