『豊後国風土記』頸峯の話は、狩猟することで農耕の豊穣を得る展開に解釈されていましたが、物語としては結局鹿を狩っていないのではないでしょうか?

確かに、明確な意味での狩猟ではありません。あくまで、害獣が守護神に転換する参照例として掲げたものです。農耕と狩猟が並列して行われた日本列島の生業において、狩猟は害獣の駆除に繋がる。よって、狩猟が農耕予祝の神事に転化してゆくのです。その際、狩猟される動物は、狩猟文化のなかで神格化されていました。そうした経緯から、鹿などが農耕の守護神へ変異する場合もあったということです。