柱に蛇の巻き付いていることが、なぜ世界樹の常套形式になるのでしょうか。
上でも少し触れていますが、樹木は再生の象徴として崇められてきました。日本列島文化との関係でいえば、『竹取物語』の、かぐや姫が竹から生まれてくるといった要素は、その典型的なものです。竹は樹木のなかでも最も生長するスピードが速く、再生力の強い植物です。普通の林相の山で木々を伐採し焼畑を行うと、もとに戻るまでに30年はかかりますが、竹山の場合は10年で再生します。かぐや姫が竹から生まれ、すぐさま成人の女性に成長してゆくこと、死と再生の象徴である月のイメージを重ね合わされることなどは、これに起因しています。一方の蛇も、脱皮を繰り返すことから、死と再生の象徴として崇められてきました。ゆえに樹木に木々が巻き付いているのは、ひとつには月に兎がいたり、蟾蜍がいたりするのと同様、同一のカテゴリーとして重ね合わされているのです。そうしてまたひとつには、その再生の力が競合しているという神話的想像力、物語化が働いているためと考えられます。