動物信仰について、虫を信仰していた痕跡などはあるのでしょうか。

いわゆる昆虫ですね。古代のカテゴリー(とくに中国的な)では、蛇も蛙も蜥蜴も虫なので(漢字に虫偏が付いています)、まず厳密に区別しておく必要があります。そのうえでの虫への信仰ですが、目立ちませんが、恐らくないわけではなかったろうと思います。例えば、銅鐸にはトンボが描かれており、これも稲作と関連があるものとみなされています。日本列島の古名にアキツシマ(蜻蛉洲。美称としてトヨ(豊)を冠する場合もある)があり、ヤマトをトヨアキツヤマトなどと表現する場合もあります。これは、トンボが飛び乱れる豊かな稲穂の茂る島、の意味です。恐らく、豊穣を保証するものとしてトンボをみていたのでしょう。現在でも各地に残っている「虫送り」は、一種の疫病除けですが、本来は農耕の妨げとなる虫を駆除し、しかし犠牲となったその魂をあの世へ送り返す祭祀です。これを通じて豊穣が祈願される点では、動物の主信仰などと同じ意味を持っていますね。